• 2021.08.07
  • インタビュー

総合格闘技のVTuberでいかに専門性を出すか VTuberユニット「BOOGEY VOXX」インタビュー(後編)

BOOGEY VOXX ロングインタビュー(後編)

ボーカルのCi(シィ)さんとラッパーのFra(フラ)さんによるVTuberユニット「BOOGEY VOXX(ブギーボックス)」。活動開始から1年半、個人勢の音楽系VTuberとしては異例の速さで人気を集めるふたりに、その戦略的かつ柔軟な活動方法について話をうかがうインタビューを、前後編の2回にわたってお届けしています。

前編では、VTuberのコンセプトの固め方や、周囲への認知の広め方、楽曲制作をする際の考え方についてお聞きしました。後編となる今回はさらに、やりたいジャンル以外の配信にどう専門性を出していくか、駆け出し期はどのような動画を作るべきかなどについて深く語っていただきました。「メントスコーラが指針になる」とは一体――?

BOOGEY VOXXのふたりfigcaption>BOOGEY VOXXのふたり。左がボーカルのCiさん、右がラッパーのFraさん

VTuberは総合格闘技と同じだけど、どの技にも専門性を絡める

――VTuberといえば、ゲーム実況や生配信をメインにされる方が非常に多い印象ですが、「BOOGEY VOXX」はそういった活動はあまり表に出さない印象があります。どういった意図があるのでしょうか?

Ci:
これは本当に単純な話、Ciたちはゲーム配信を他のライバーさんたちみたいに、エンターテイメントとしてうまく発表できなかったってことで……。

Fra:
そんなカッコつけんなよ!

Ci:
ゲーム下手なんです! VTuberたるもの、やれるならやりたい!

Fra:
自分たちの場合、曲よりもゲーム配信のほうがクオリティが低いから、単純に隠してるだけなんです(笑)。ただ、生放送で意識しているポイントとしては、「動画の内容に専門性があるかどうか」ですね。

VTuberって総合格闘技的だなって思っていて、ゲームもやれば、音楽もやるし、トークも企画も回せるっていう人が強い。そういう中で「うちらは歌1本で行くぞ」って決めつつも、もちろん他のこともやらないといけない。

では、僕らがメインに据えている音楽(ラップパートのあるポップミュージック)にもつながって、かつユニットの人気にも貢献できるものって言うと「雑談」だなと思っています。だからゲームの生配信をする場合も「雑談をメインにしたゲーム配信」を2人でやるスタイルなら通用するんじゃないかと。たとえば「モンスターハンター」ってこの世界で一番面白いゲームじゃないですか。

Ci:
最近覚えたばっかりだからね。

Fra:
でも「モンスターハンター」よりも僕らの“しゃべり”のほうが面白い瞬間っていうのがたまにあるんですよ。ご飯でたとえると、そのときはモンハンというカレー単体をどう味付けするかじゃなく、「モンハン×しゃべり」というカツカレーになる。音楽以外のコンテンツでも、雑談という専門性によってそういう組み合わせができるかで考えてますかね。

――VTuberは総合格闘技的という話はとてもよく分かります。一方で中には、そうしたゲームや音楽といったものが苦手で、「あえてやらない」という選択肢をとっている人も少なくないですよね。

Fra:
その気持ちはよく分かる。できないことを無理矢理やらなくてもいいと思う。たとえば、辛いものが苦手なCiさんをダマして食わせるとか……。

Ci:
やるけどね?

Fra:
やるんだ。言質とったわ。

Ci:
根幹部分として大切なのは「自分が面白いかどうか」だと思っていて「面白くないのにやらなきゃ」はやらない方がいいんですよ。最終的に俯瞰的にみたときに、エンターテイメントになりえるなって思えたら価値を感じられる。

Fra:
僕はよくメントスコーラの話をするんですけど、あの面白さはめちゃくちゃ根源的というか、何も組み合わせなくても成立するじゃないですか。YouTube見ている人は、コーラにメントスを入れたら何が起きるのかとっくに知っているのに笑ってしまう。

だから、自分たちの活動が「メントスコーラより面白いか?」っていう指針は最低限もってますね。10万円以上かけてつくる音楽が、500円以下のメントスコーラに負けてしまってはダメなんです

「追わなきゃいけない」になるとファンとの関係は破綻する

――Ciさんは「REALITY」というバーチャルライブ配信アプリで生配信を毎日、すでに200日以上も行っていますよね。そもそも毎日配信を続けるのは非常に大変だと思うのですが、どういったモチベーションでされているのでしょうか?

アプリ「REALITY」のCiさんページ
アプリ「REALITY」のCiさんページ(左)。配信では、公開したばかりの楽曲をファンと一緒に聴く右)などさまざまな交流を行っている

Ci:
「BOOGEY VOXX」の活動自体はFraがやりたいことをやるべきだと思っていて、そこは達観しているところがあるんですけど、それはそれとして、「Ciは何ができるか」「自分は自分で何かを成し遂げたい」って考えたんです。

そんなときにたまたま始めた「REALITY」が、「まいにち配信」というバッチが付くとプラットフォームの構造上「おすすめ」として表示されやすいことを知って。「じゃあ、やってみるか」と軽い気持ちで続けてみたら日毎に達成感を見いだせるようになったんで、「365日成し遂げたら、どうなるんだろう?」と今に至ります。別に今でもそんなに大したことだとは思っていないんですけど。

Ciさん

Fra:
マジですごいよ。

Ci:
かといって「REALITY」で音楽を出したり、何かのイベント事に参加したりとかは、すでに「BOOGEY VOXX」のコンテンツに価値がある以上やりたくないなとは思っています。多分、それをやりはじめてしまったら義務が生まれてしまって、今みたいに楽しんではできないですね。

Fra:
200日以上配信をやって義務感を全然持っていないのは、どこか壊れてるよ。自分が「やれ」と言ったわけでもないし。

Ci:
自分にとっての「BOOGEY VOXX」のCiを構築するための場所だとも思っていて。毎日しゃべったりすることで、自分自身のあり方をより固められていきましたし、タレント力をコツコツ磨けている気がしています。修練場みたいな感覚。

Fra:
Ciさんのファンって、“アーミー性”が高いよね。強いオタクが多い。多分、Ciさんのディテールがより知られていることで、より強化されているんだと思う。

Ci:
Ciが発信するものに対して、リスナーもストレスを感じてほしくなくて、「追わなきゃいけない」という感覚になったときに破綻してしまうと思っていて、そういう意味でも今の配信のスタイルはとても気楽なもので、だから続けられているんだと思います。

Fra:
大人の恋じゃん……!

Ci:
そうかな?(笑) ファンの方々もCiに向けてエンターテイメントを届けてくれるときもあって、一緒に配信の場を構築しようという動きはありますね。

――CiさんはVTuberの数あるイメージの中のひとつである「ライバー(生配信者)っぽさ」をユニットで担っているのかもしれませんね。

Ci:
そうですね。先程の「VTuberは総合格闘技的」という考えにもつながると思いますが、VTuberがどのように「ライバーっぽさ」を出すかって問題は避けては通れないものだと思うんですよ。VTuberを構成する大切な要素のひとつだと考えています。

全部がストレートでは勝てない。ジャブを混ぜるのも大事

――「BOOGEY VOXX」はカバーの選曲に関しても、Ado「うっせぇわ」やEve「ナンセンス文学」のような今の定番曲もあれば、mihimaru GT「気分上々↑↑」など意外なところから攻めてくるときもあって、それが視聴者的には楽しみのひとつだったのではないかと思っています。

2006年のヒットソング、mihimaru GT「気分上々↑↑」のカバーfeat. 北小路ヒスイ

Fra:
本当に僕らが好きで聴き込んだ曲しかやってこなかったからかもしれません。だからインターネット老人会寄りな選曲も多いですね(笑)。それから一般的なVTuberの方ってそれほどカバー曲を出されるわけではないから、やる場合は「ここぞ!」と人気の曲を選ぶことが多いのですが、自分たちは毎週やっているので、一回一回そこまで選曲にこだわる必要がないってのもありますね。

――VTuberに親しんでいる世代からすると、そういった感覚で選ばれている曲が、別の文化圏から届いたもののように思えて、とても新鮮に聴けているのではないでしょうか。

Fra:
ファンからの嬉しいコメントのひとつが「気になったので、原曲の方も聴いてみました」っていうものですね。それは自分たちも生前、ニコニコ動画の「歌ってみた」文化で同じように触れてきた感覚だったので。

m-floが2001年にリリースした代表曲「come again」のカバー

――そもそもの話ですが、楽曲のクオリティが高いことも視聴者の驚きにつながっていたようにも思います。「個人VTuberでこれだけのものが出せる!」という意外性は間違いなくありました。

Ci:
ありがたいね……。

Fra:
僕らが本来もっている音楽的なポテンシャルを舐めないでぶつけるっていうのはありますね。「これくらいでいいでしょ」とは絶対にしない。

――これから動画投稿を始める方々の中にも、どういう動画を作るべきかで迷われている方は多いと思うのですが、そうした方々は何に気をつければいいと思いますか?

Fra:
YouTubeって指数関数的に伸びていくじゃないですか。再生数1から100よりも、1万から10万になる方が早い。それは拡散してくれる人の人数やアルゴリズムの問題です。で、あれば、1から100の間に全力を出すべきかというと難しいところです。

だから「ある程度温存しながら、ある程度の全力を出す」が答えになるんじゃないかな。理論的に登録者0から100万にいくのは難しいから、ある程度、数字の伸びを実感できるようになってから高クオリティの動画を出したほうが良いのかもしれない。僕らのユニットは常に全力だけど、全力を出すことが必ずしも正しい答えではないんです。

Fraさん

――格闘技で言えば、ジャブを打ちつつ、ストレートを狙う機会をうかがうという感じでしょうか?

Fra:
ジャブとストレートの頻度は考えたほうがいいかなと。全部ストレートでは当たるものも当たらない。

――「BOOGEY VOXX」は、Ciさんの配信や雑談などといったものがジャブになっていて、だからこそストレートが活きているのかもしれませんね。

Fra:
そうですね。自分たちの立場で言えば、今はどんな種類のパンチがあるのかを探しているという感じですかね。

――読者の方の中でも自分にとっての「ジャブ」や「ストレート」は何かを考えてみると良いのかも知れませんね。

Fra:
YouTubeって基本的には毎日動画をコンスタントに上げ続けていくことが重要なプラットフォームじゃないですか。以前、YouTubeで活躍している方から「BOOGEY VOXXはまだ週1でしか出せてないから、あと週6出せば大丈夫」ってアドバイスいただいたんですよ。その方はサブチャンネルも併せて週に14本動画を投稿していたんですけど、僕らにはまだ余力があると。「なるほどな」と、未だに僕の背骨になっています。

――そうなると、まず動画クリエイターは毎日何を投稿するかを明確化しなければいけませんね。

Fra:
いきなり毎日投稿するというのはできなくて、おそらく時間経過で形成されるものだと思います。趣味からはじめたものが、ある瞬間に損益分岐点というか、仕事を辞めるか悩むラインがくる。そのタイミングくらいで、投稿頻度をあげるかどうかを考えるんだと思います。

最初は2週間に1回くらいで楽しくやるのが大事ですかね。自分たちの活動を振り返ってみると、もちろん今も楽しいけど、0から1000伸びる頃が一番楽しかった。毎日アナリティクスを見て、3人増えて喜んだりしていたな……。

一番強かった時期の「BOOGEY VOXX」を倒したい

――VTuber活動を継続していく中で、特に嬉しかった出来事は何でしょうか?

Ci:
最初は得体の知れないユニットという印象が強かったと思いますが、最近は「Fraさんはきっとこうだろう」「Ciちゃんはこんなだろうな」と個々人のイメージ像を視聴者に持ってもらえていることが嬉しいですね。「BOOGEY VOXX」ってものを、ひとつのカラーやキャラクターとして第三者に落とし込んで伝えられているということですよね。最大の認知の証拠だなって。膨大な動画のあるYouTubeのなかで「BOOGEY VOXX」というキャラクター性が認知されているのって、相当にまれなことだと思うんですよ。

Fra:
僕もそれに近いかも。コアなファンが自分たちの活動の意図を理解してくれていることを肌で感じていて、僕たちの人間性への理解がそのまま数字として反映されていることも、すごく嬉しいですね。

それから最近、僕らのことをVTuberと知らずに、音楽を好きになってくれたファンも増えてくれたのも、めちゃくちゃテンション上がりました。知らない層に届いたことで、ようやく「VTuberで飯が食えつつある」んだなと思います。

3D化したふたり
6月20日に開催したライブ「#デッドマーチ02」で、初めて3D化したふたり

――徐々にVTuber外部の領域へも進出している最中だと思いますが、今後はどのように活動を展開していく予定ですか?

Fra:
僕らはこれまで「覇権」というキーワードを掲げて活動を続けていましたが、次の大きなテーマは「No.1を獲る」ってことですね。数字やクオリティ、話題などなんでもよくて、何かのランキングをつけるときに「BOOGEY VOXX」が1番になるってことですね。1番っていうと、達成できたか否かが明確になってしまうのでずっと逃げてきていたのですが、これからは逃げずに挑戦していこうと思っています。

Ci:
Ciは自分自身が1番のライバルだと思っています。2020年3月からの活動をはじめたての頃が1番勢いが良かったし、1番強い存在だろうと。だから、あの頃の「BOOGEY VOXX」を倒すことが目標です。もっと具体的にいうなら「D.I.Y.」を倒したいんですよ。

個人勢VTuberのオリジナルソングでは異例の40万回再生を突破している、BOOGEY VOXXの代表曲「D.I.Y.」(Prod by D.watt)

Fra:
いやーしんどい!!

Ci:
あの曲があったから自分たちの今の活動があることは分かっているんですが、そこから先の自分たちを知ってもらわないといけないと思っているので、そこに立ち向かっていかなきゃなって。

Fra:
自分たちのなかの1番を倒すってことだね。

――これは新曲にも期待したいところですね。

Fra:
10月にも新しいアルバムは出す予定で、その間にもいろんなコラボが進んでいる最中です。なので、オリジナル楽曲はこれからどんどん出てくる予定ですね。

――最後にクリエイター志望の方々にアドバイス的なメッセージをお願いします。

Fra:
常にバカのフリして行動していくことが大事だと思います。できるかできないかはあんまり考えなくていいし、その結果が出るか出ないかもあんまり考えなくてよくて、基本的に自分がその瞬間やりたいと思ったら、すべてGO。周りに左右されて、世界を変えるかもしれないアイデアが消えてしまうのが一番悲しいので。

Ci:
常に1番の敵は自分であってほしいなって思います。誰かと比較して凹むのではなく、自分自身に問うたときに凹んでほしい。YouTubeや配信で活動する以上、アーカイブとして成果が残るわけで、だから1ミリも後悔しないものを作ってほしいです。

やっぱり、Ciが生前から活動してきて1番後悔していることって「うまくできなかったな」ってものができてしまうことなんですね。そういう感情を生み出さないよう努力する、という視点で考えてみたら、ちょっと視界が変わるんじゃないかなと思います。

――ありがとうございました。

BOOGEY VOXX

(企画・聞き手・構成:ゆりいか 編集:黒木貴啓/ノオト)

プロフィール

BOOGEY VOXX

BOOGEY VOXX(ぶぎーぼっくす)

バーチャルアンデッドユニット

『#いきてるみんな、生きてるか!?』

BOOGEY VOXXとは……、ボーカルでキョンシーのCi[シィ]とラッパーでフランケンのFra[フラ]からなる2人組のバーチャルアンデッドユニット。

2020年3月のデビューから怒涛の勢いで勢力を拡大し、関与した楽曲は120曲オーバー、チャンネル登録者は49,000人を超え「最強の個人V」の肩書をほしいがままにしている。

毎週金曜日19時に欠かさず楽曲を定期投稿、2020年5月以降ハイペースなオリジナル楽曲のリリース、VTuber楽曲大賞楽曲部門で個人最高位へのランクイン、アニメイト秋葉原本館でのポップアップストア展開、デビュー1周年にして1stアルバムCDの全国リリース、くわえて、自己資金による3Dモデル制作およびワンマンライブ開催など、インターネットから現実を縦横無尽に駆け巡る!



公式サイト:https://boogeyvoxx.booth.pm/

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