• 2020.08.14
  • インタビュー

「まずは投稿」「オリジナリティは後から」 動画で読書レビューの開拓者 文学YouTuberベルの5年

グルメ、コスメ、ペットなど、YouTuberは身近にあるさまざまなものを日々取り上げて活動している。そんな中、特に“読書”をテーマにした動画コンテンツを発表しているのが、文学YouTuberベルさんだ。

2020年面白本ランキング」や「最近読んだ小説一挙紹介」など、本のあらすじ紹介と自身の感想をまとめた書評動画が人気で、今やチャンネル登録者数は11.9万人。文学作品だけにとどまらず、ミステリーやホラー、恋愛、ビジネス系など、さまざまなジャンルの本をレビューしている。

書評だけにとどまらず、読書にかかわるさまざまな企画動画も投稿している(画像はYouTubeより)

今年で活動5周年。1月には「文学YouTuberベル×宝島社文庫フェア2020」を開催し、おすすめの書籍20冊が自作のポップつきで全国書店に展開されたことも大きな話題となった。

そんな読書を切り口にさまざまな活動を展開しているベルさんも、最初は自分が文学YouTuberになるとは思っていなかった。なぜ動画を投稿するようになったのか、なぜ活動を5年も継続できたのか、詳しく話をお聞きした。

新型コロナウイルス感染リスクに備え、今回のインタビューはオンラインで行った

●お手本がいなかったから、自由に活動できた

――ベルさんは2015年頃からYouTubeに動画を投稿されていますが、デビューのきっかけは何でしたか?

ちょうど2015年は、ヒカキンさんや東海オンエアさんといったYouTuberたちがすでに大きく注目されている頃でしたね。動画を個人で投稿して、それを仕事にしている人たちがいるってことを知って「面白そうだな」と思ったんです。

それまではSNSをひとつもやっていなくて、リアルな実名からは切り離されたところで、何か表現してみたいなとは考えていて。「どうせ(周囲の)誰かが見るわけじゃないし、自分もやってみよう!」と、ノリでデビューしました(笑)。YouTuberになりたいというよりは、Twitterに投稿するような感覚で、好きなことを動画にしてみようという気持ちでしたね。

1本目は文学にまったく関係ない「弾いてみた」系だった

――2017年冬から「文学YouTuber」という肩書きを名乗られるようになりましたが、これにはどういったきっかけがあったのでしょうか?

はじめた直後は、YouTuberさんのまねっ子みたいな感じで、ご飯を食べたり、ピアノを弾いたり、有名人のモノマネを披露したりと、ワチャワチャした動画を投稿していましたね。

チャンネル登録者数が6000人を超えたあたりの3年前。書評だけでなく弾いてみた系、食べてみた系、さまざまな動画が混在している(画像はYouTubeより)

そんな中で本のレビューも趣味として発表していましたが、他の動画に比べて全然伸びませんでした。ニッチなジャンルだし、バラエティ系の動画の方が人気だったので、仕方なかったんですけどね。

ただあるとき、視聴者の方から「本を紹介するときはいつも熱いですね」ってコメントをもらったんです。まだまだ自分のやりたいことが分からなかった中で、無意識に本のレビューだけは凝った作りをしているようだと。それで「もしかしたらこれは自分の好きなものなのかも」とじわじわ思うようになりました。

方針の決め手となった動画

はっきりと方針が定まったきっかけは「読書感想文おすすめ本7選を紹介する!読書嫌いは見とけ!」って動画が(当時の自分の基準では)バズったことでした。もちろん再生数だけなら他にも伸びが良い動画はあったのですが、これまで全然伸びなかった読書関係の動画が多く見られたのが、非常にうれしかったんです。

そこから本格的に文学YouTuberとして活動したいと思うようになり、YouTube主催のクリエイターイベント「YouTube NextUp」に参加して、撮影技術や編集のコツなどを学び、プロとして活動をはじめることになりました。

――本格的な活動をはじめられてから、さまざまな苦労があったと思いますが、特に大変だったのはどういったことでしょうか?

技術的な問題よりも、周囲から理解を得るのが非常に難しかったですね。今でこそ、YouTuberは子どもたちにとって「なりたい職業」というイメージになっていますが、当時は世間的には知られていない存在だったので。

自分の活動が家族にバレた後「いつまで、そんなことやってるの?」といった雰囲気が感じられて、少し寂しかったですね。今では応援や協力をしてくれますが、当時は周囲の無理解が辛かったです。

また一般的なYouTubeのレビュー動画って、食べたり驚いたりといったアクションがあるから分かりやすいですが、書評動画では本を開くだけになってしまうので、感情の動きを表現するのがすごく難しい

なので、どうすれば本の魅力を伝えられるんだろうと自分なりに工夫をしていました。そういった点が視聴者の方に「熱いね!」と褒めていただいた理由かもしれません。

――そういった工夫が「文学YouTuber」となる道に繋がっていったと。

そもそもお手本がいなかったですからね。だから逆に自由にやりやすかったと言えるかもしれません。最初は有名なYouTuberのまねっ子でも良いと思うのですが、そればかりでは一番になるのは難しいですし、自分の方針もなかなか定まりません。

ふわふわとしたまま活動を続けているとテンションも落ちてしまいます。だから読書という1本の道に絞ったことで、周りの状況に流されなくなりましたね。視聴者としても私が何をやっている人なのかが分かりやすくなったんじゃないかと思います。

●モチベーション維持の秘訣は“殻に籠もる”こと

――書評動画では本を未読の人にも分かりやすく紹介されている印象です。ベルさんが動画を投稿する際にこだわっているポイントは何でしょうか?

だいたい1本の動画が10~15分ぐらいの長さなのですが、その間に自分が喋るセリフは全て事前に原稿化しています。その場で思いついたことをバーって話すだけでは、人を惹き付けるトークにならないので、改良を重ねながら構成を練っていますね。

また私の本のレビューは、読者目線であることを意識していて、あらすじや作品の特徴を客観的に紹介したあとは、私の読んだ後の感想を自分の言葉で話すようにしています。もし100人が同じ本を読んだとしても、全く同じ感想にはならないと思うので、あくまで私の読んだときの想いを語る姿勢を大事にしています。

それから、どんな本でも「誰でもおすすめですよ!」と語るのではなく、あくまでフラットな立場で伝えるようにしています。ミステリーやホラーなどの作品では「グロが苦手な方は注意したほうが良いです」といった具体的に伝えたほうが、よりレビューの信頼も上がることになるので。

――お話を聞くと、一本の動画を収録するのに「本を読む→原稿を書く→収録する→編集する」という流れになっていると想像しますが、これはなかなか大変な作業ではありませんか?

時間がかかってしまうのは当然だと思っていますし、編集作業は事前に原稿化した文章を参考にできるので、あまり苦ではないですね。もちろん、こういった作業の流れも試行錯誤するうちに慣れてきて、今のスタイルに落ち着いた感じです。

現在の撮影時の様子を再現してもらった

――何を参考にして今の動画制作スタイルに至ったのでしょうか?

視聴者の方からのフィードバックをいただいたり、YouTubeのアナリティクスで動画の離脱ポイントやサムネクリック率などをチェックしたりして、自分の側で変えられるものがあれば、それを試してみるというサイクルの繰り返しですね。

――動画でのベルさんの声は非常に聞き取りやすく、内容がスムーズに頭に入ってくる印象です。発声などにも何か工夫はあるのでしょうか?

元々声に関しては「聞き取りやすいね」と言われることが多くて、特に訓練したというわけではないですね。ただ、編集の際にセリフの文節ごとに細かくカットを挟まないようにしています

一般的なYouTuber って若年層がメインの視聴者なのですが、私の場合は読書をテーマにしているため、40代や50代の方も多くいらっしゃいます。そういったYouTubeに慣れていない方でも、ある程度聞き取りやすいように、違和感のない編集をするようにしています。

――デビューされてから5年以上、読書を軸にした動画を投稿されていますが、これほど長く継続できた理由は何だと思いますか?

「あくまで自分のコンテンツだ!」という意識があったからかもしれません。動画は誰かに指示されたものではなく、自分が「これを出したい!」と思って作っていくものです。登録者や再生数が伸び悩んでも「もともとコスパが悪くて、人気に火がつきにくいことは分かっていたことだし」と、納得できていたのが大きいですね。

紹介する本を選ぶときも「今はこれが人気だから」とか「映画公開が迫っているから」といった理由で、売れ筋のものばかり追いかけていたら続けられなかったと思います。そもそもそういった本が自分に合うかもわかりませんし、興味が湧かなければモチベーションにも繋がらない。それで伸びない結果になったらもっと嫌な気持ちになりますしね。

またエゴサなどで他人の意見を聞くのもやらないようにしています。自分が揺らいだり悩んだりしてしまう要因を遠ざけて、殻に籠もるのも大事だと思うんです。

人の意見が大切な場合もありますが、多くの人の言葉を受け入れすぎると、動画も尖っていた部分が丸くなってしまいます。誰かの意見に簡単に左右されないようになることが、モチベーション維持にも繋がるんじゃないかと。

もちろんがむしゃらにやることは最初は大事だと思います。それ以降の継続を考えるなら、些細なことに感情が流されないようになるメンタルは重要ですね。

●「読書ってかっこいい」を発信したい

――最近では、中田敦彦さんやDAIGOさんなど、教養的な知識を要約した動画への需要が高まっている印象です。ベルさんはそうした時流をどのように受け止められていますか?

いわゆる知識エンタメの需要が高まっている印象はあります。そういった方々の動画は勉強になりますし、何より単純に面白い!  多くの人から人気な理由が分かります。

ただ私のスタンスは、あくまで視聴者の方に本を読んでもらいたいところにあるので、要約系の動画とは方向性が少し異なっていると感じています。肝心な部分はネタバレせず、自分なりの素直な感想を言うことで、単純な内容の要約にはならないように工夫しています。

――視聴者が読書そのものに興味を持つことが大事だということですね。

自分が本の内容を教える役割になりたいというより、視聴者の皆さんがそれぞれの意見を自由に交わし会える“媒介”になりたいと考えています。

私の動画では「本の解説って読む?」「ブックカバーかける派? かけない派?」といった切り口で、視聴者の方に意見を募ってピックアップする企画もやっていて、皆さんと一緒にチャンネルを作ってきた意識がありますね。

「ブックカバーかける派? かけない派?」

なので読書会を開いたり、リアルイベントを実施したりと、YouTubeに限らずさまざまな方法で読書の魅力をより知ってもらいたいと思っています。

――ベルさん自身に深い読書愛があるから、そういった発想が生まれるのかもしれません。

一般的にはまだまだ読書の趣味って内向きなものとして見られていて、就職活動で趣味の欄に「読書」って書くと、つまらない人って思われる雰囲気があります。

でも私は、読書をポジティブなもの、カッコいいものだと考えていて、そういったイメージを世に広めたいです。実際たまたまYouTubeで私の動画を見つけて、読書を趣味としてはじめてみたり、久しぶりに本を手にとったりしたという声が届いたこともありました。

そうした“新しい読書”のイメージを作っていくことが、今の私のテーマだと思っています。

――今後、挑戦してみたい企画や叶えたい夢などはありますか?

読書好きのためのファッションブランドを作ってみたいです。以前Twitterで「#読書ってかっこいい」というハッシュタグを広めて、読書中の自撮り画像をみんなで投稿しようと呼びかけたのですが、読書とファッションの掛け合わせって面白いなと。

モデルを全員小説家の方にして、本にちなんだアイテムをファッションに取り入れてもらうといった具合にこだわったブランドにしていきたいと考えています。

――そのアイデアがどのようなかたちで公開されるのか非常に楽しみです。最後に、今YouTuberを目指している方にアドバイスなどあれば、お聞かせ下さい。

私も最初は何がやりたいのか全然分からなかったのですが、何年かかけていろいろと手を出すうちに、やっと見つかった感じなので、まずは何が自分に合うのかを探してみると良いと思います。動画を投稿した後に「しっくりとくるか」「発表が苦ではないか」を確認していくうちに、オリジナルなものが生まれてくると思います。

最初はクオリティなど気にせず、誰かのまねっ子でも良いから発表してみる。それから自分に向いているのはどんなことなのか、考えてみてください!

(取材・執筆:ゆりいか 企画・編集・撮影:黒木貴啓/ノオト)

プロフィール

文学YouTuberベル

YouTubeで読書の魅力を発信する動画クリエイター。登録者11万人。
書評を中心に作家対談や本にまつわるあれこれの解説などを配信。
リアル書店のプロデュースや文庫フェアコラボなども実施。

Official Website:http://bellelinwall.com/
YouTube:https://www.youtube.com/c/BellelinWall
Twitter:https://twitter.com/belle_youtube
Instagram:https://www.instagram.com/belle.gokigenyou/

この記事をシェアする

  • Twitter
  • Line
  • facebook
  • hatena

Bevistaは動画配信者を応援するサイトです

動画配信の紹介ページを作成されたい方はこちら