• 2021.03.07
  • インタビュー

元芸人がYouTubeでサッカー戦術の魅力を発信→プロの分析官に 「Leo the football」の言語化とリサーチの日々

日本代表や欧州サッカーを中心に戦術の動画をアップする、サッカー系YouTuberの「Leo the football(レオ ザ フットボール)」さん。リズミカルでわかりやすい戦術解説は評判を呼び、チャンネル登録者数は11.2万人を超える(2021年2月時点)。今では、鋭い分析能力を買われ、プロのチームや選手個人の分析官も務めるほどだ。またCS放送のサッカーニュース番組「Foot!」では、パーソナリティとして出演している。

Leo the football TV
「Leo the football TV」YouTubeチャンネル

YouTubeの枠を超え、幅広くサッカーに携わる「Leo the football」(以下、レオさん)さんに、YouTuberになったきっかけから現在に至るまで、そして今後の展望について、話を伺った。

●サッカー×掘り下げられるテーマ×性格=戦術分析

Leo the footballさん
オンラインインタビューに応じるLeo the footballさん。この日は自らが監督を務めるチームの練習の合間に参加してくれた

――「サッカー好き」にも、さまざまなタイプがあります。レオさんがサッカーに興味を持ったきっかけは何ですか?

きっかけは、2002年頃。当時、高校生だった僕はアメリカのプロレス団体・WWEの中継を見たくて、CS放送のスカパー!に加入していました。そこでたまたま深夜に、スペインのサッカー「リーガ・エスパニョーラ(現在のラ・リーガ)」を見たんです。テクニックのあるサッカー、そして独特な実況に魅了されました。

僕は福島県の田舎に住んでいたこともあって、クラスメイトにスカパー!を契約している人がいなくて。世界的に見れば、超有名なサッカーリーグなんですけど、「自分だけが知っている深夜のスポーツ番組」という感じで見ていましたね。学生の頃って、深夜のコント番組とか見つけるとうれしいじゃないですか。

――その気持ち、わかります。好きな選手はいましたか?

根性と必殺技がある選手が好きで、特にルイス・エンリケとカルレス・プジョル、あとデビッド・ベッカムですかね。チームとしては、FCバルセロナ。ジョセップ・グアルディオラ監督の頃に、戦術についての記事を読んで、おもしろいなと思いましたね。

――そこからサッカー好きが始まって、どういう経緯でサッカー系YouTuberになったのですか?

元々、僕は芸人として10年ほど活動をしていました。2013年まで「スーパーマッシュパーティー」というコンビを組んでいたんですが、解散後に僕はラッパーとしての活動を、相方の「ちゃまくん」は芸人の傍らYouTubeでサッカーゲームの実況を始めて。そんな彼から「お前、欧州サッカー詳しいからYouTuberになったらいいんじゃね?」と言われ、試しにちゃまくんのチャンネルで欧州サッカーを語るコーナーを5カ月ほどやってみたところ、視聴者さんからたくさんのコメントをいただいたんです。自分でもやる気になり、2016年5月から今のチャンネルを始めましたね。

元相方・ちゃまさんのYouTubeチャンネルで、Leoさんが欧州サッカーの解説をし始めた1本目の動画。当時は「サッカーの勉強」と題して、バルセロナFCをメインに世界のサッカーニュースを届けるコンセプトだったもよう

ちゃまさんのチャンネルで約5カ月に渡って100本以上のサッカー解説動画を投稿後、独立を宣言。ヒップホップアーティスト兼新人サッカーライター’’Leo the football’’としてYouTubeチャンネルを解説する

――戦術を分析するチャンネルに特化させたのは、なぜでしょうか?

テーマとして掘り下げられるものでないと、動画をアップし続けられないじゃないですか。

あと僕は、何でも分析する性格なんです。例えば、あるアーティストのCD。「昔のアルバムのほうが好きだったな……」と思うことってありませんか? でも僕は「なぜ曲調を変えたんだろう? そういえば以前インタビューで、ああ言ってたな」とか、その人が音楽性を変えた過程を深堀りして、その背景込みで新しいアルバムを好きになるんです。

だから掘り下げられるテーマ×性格を考えたところ、「戦術」にたどり着きましたね。

――なるほど。YouTubeの活動をはじめたとき、目標はありましたか?

なかったですね。僕のチャンネルはニッチなテーマだし、登録者数を目標にすると、やりたいことができなくなるので。毎日アップすることも別に目標にはしていなく、自分の中では歯磨きのような感覚です。寝る前にやっておかないと、ちょっと嫌だなって。

――とはいえ、歯磨きと動画制作はかかる労力が全然違いますし、最初は再生回数も少なかったのではないかと思います。そのモチベーションはどこにあったのでしょうか?

そうですね、今に比べれば再生回数は全然なかったですね。でも1つのコメントで頑張れますから。それに面倒なことをせずに、結果出している人っていないですよね。となると、面倒くさいからこそ価値があるんだろうと思っています。

レオさんの動画の撮影風景
レオさんの動画の撮影風景

●生配信前はリサーチに3、4時間

――深いです……。そんな日々の積み重ねで、今では登録者数が11万人超え。登録者が増えるようなターニングポイントはあったのでしょうか?

じわじわですね。当然サッカーW杯の時期など、国が盛り上がっているときは振れ幅が大きいですが、「この動画を上げたからどんっと登録者数が増えた」とかはないですね。登録者の年齢層は20代が一番多くて、98%男子です。

――圧倒的な男子からの支持率ですね。YouTuberになってから苦労したことはありますか?

最初の頃は、自分の伝えたいメッセージが誤解して伝わってしまうことが嫌でしたね。だから言い方を配慮するようになりました。

例えば「おもしろいサッカー」と言ってしまうと、『お前、個人の判断だろ』となってしまうので、抽象的な言葉は使わずに「ボールと選手が動いて、たくさんチャンスを作るサッカー」など、具体的に言うように心がけています。

あと主語や目的語を抜かないようにしましたね。例えば、戦術を解説するときも「Aが攻めているときにBに対して」と丁寧に説明します。だから極論も言わないようにしてます。ひと言でズバっと極論を言ったほうが、カリスマっぽくてかっこいいんですが。

――簡単な言葉ほど誤解を生んでしまうのは、ウェブの記事でも同じことが言えそうです。

YouTubeに限らず、インターネット上ならどこでも起きていることですよね。あと僕は早口なので、句読点を意識して話すようになりました。例えば「マンチェスターユナイテッドが勝ちました」ではなく「マンチェスターユナイテッドが、勝ちました」みたいな。

レオさんの動画の編集風景
レオさんの動画の編集風景

最近の苦労といえば、時間の両立ですね。欧州サッカーは時差の都合で深夜や朝方にあり、それをYouTubeの生配信で実況解説をしています。終わってから1~2時間の仮眠をとり、そして朝9時から分析官など別の仕事。そして帰宅後また1~2時間の仮眠をとってから、動画制作のためにリサーチをするなど、慌ただしい日々を過ごしています。ただ好きなことだし、楽しいからやっているので、それを苦労に入れていいのかわからないです。

――YouTubeの制作時間は、1日どのくらいなのでしょうか?

動画を作るときは、事前に4〜5試合を見直し、それからデータサイトの情報と照らし合わせて、自分の考えに客観的事実を補足します。このリサーチに3~4時間かけているんです。場合によっては、もっとかかる日もあります。

――リサーチに3~4時間! それから編集に時間がかかりますよね?

そうですね。生配信なら編集時間はないのですが、例えば選手が移籍するなど大きいニュースがあるときは編集した動画をアップします。その時は撮影が30分、編集が1時間30分程度ですね。

特にリサーチに時間がかかったという動画「久保をヘタフェが熱望した理由-特徴と相性と起用法解説-」。久保建英選手が入ったヘタフェCFの試合をたくさんチェックし、レポート作成に加え台本も書いたという

何を話すのか構成を考えてから撮影し、噛んだところを編集、あとサブメニューを作って、アップロードという流れです。台本は一言一句書いていませんし、編集ではテロップも入れていません。これをやると、どうしても作業時間が長くなりますので。

――とはいえ、リサーチからアップロードまで結構な重労働ですよね。最近は、生配信の割合が多いようですが、それはなぜでしょうか?

僕は生配信のほうが得意だからですね。生配信は視聴者さんからのチャットに答える形式でやっているんですが、聞かれる質問によっては冗談言ったりして盛り上がるじゃないですか。このアドリブ性が視聴者さんにも好評ですし、また一緒に動画を作りあげている感があっていいですよね。

●“自分で言語化”がオリジナリティのカギ

――なるほど。ちなみに参考にされているYouTuberはいますか?

YouTuberではありませんが、映画評論家のライムスター・宇多丸さん(※)を尊敬していますね。あの方はラッパーですが、映画を語ることでも有名になった人です。丹念なリサーチと考察で映画を批評して、人の心に投げかけています。それは、自分が今サッカーでやっていることと同じだと思っています。

※宇多丸…ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパー、またTBSラジオ月~金曜のレギュラー番組『アフター6ジャンクション』のラジオパーソナリティ。クラブ界隈で知られたトークスキルがラジオパーソナリティとしても開花、愛ゆえ本音で語りつくす映画批評コーナーが大きな話題を集め、2009年には第46回ギャラクシー賞「DJパーソナリティ賞」を受賞した。

レオさんは現在もラッパー活動は続けており、同じ「Leo the football」名義で音楽用のYouTubeチャンネルも立ち上げている

――サッカーの解説者さんを参考にすることはないですか?

尖っているように思われてしまうかもしれませんが、サッカーはないですね。駆け出しの頃は見て勉強していましたが、今はもうそのフェーズじゃないと思っています。というのも、他の解説者の話を聞いてしまうとつい引っ張られて、差別化ができなくなるんです。

――自分で言語化することで差別化がはかれると。

はい。例えばマンチェスター・シティFCの絶対的な存在、デ・ブライネが試合に出てないとき。他の解説者だったら「もしデ・ブライネが出場していたらこういう戦術になる」という話をするでしょう。でも実は、彼はチームメイトに対して態度が悪いときがあるんですよ。味方がレベルの低いミスをしたら、呆れて走らない。そういう姿は、ファンの人も見ています。

そんなデ・ブライネがいない時にチームの調子がいいのは、他の選手たちが「『あいつがいないから負けている』と思われたくない!」と一致団結しているから、というのが僕の解説です。サッカーなどの団体競技をやったことがある人ならわかると思いますが、「あいつがいない時に負けたら、あいつに頼っているみたいで癪に障る」ってありますよね。

マンチェスター・シティFCがデ・ブライネのいないときでも勝てる理由について語った回

これはデータに基づく解説ではないので根拠が少ないんですけど、でも試合を観ている人なら、共感してもらえる話だと思うんです。戦術だけの解説も楽しめないと思うので、時折こういう選手を絡めた話もしています。

――そのチームのことを何も知りませんが、急に愛しくなってしまいました。たしかにファンにとって、選手の小ネタはおもしろいですよね。

●めざすは、日本サッカーの哲学のアップデート

――YouTubeをきっかけに、今では分析官の仕事もしているそうですね。

YouTube活動を始めてから3年経った頃、俳優の篠田光亮さんから「レオくんに現場で戦術分析をやってほしい」という連絡があり、一緒にドキュメンタリー動画を作ることになりました。そこで僕を分析官として採用してくれるチームを募集したところ、早稲田大学の伝統的サッカーサークル「稲穂キッカーズ」から応募があり、リアル分析官としての仕事が始まりました。

今はポーランドで活動している宮本裕大選手と、FC刈谷に所属する古賀俊太郎選手の分析も担っています。あと分析官とは別に、今年から都リーグ4部に参戦するF.C.SVABO(シュワーボ)の監督もやっています。

自ら個人分析官を務める選手の試合解説動画もYouTubeで公開している

――監督業もですか!? どのような経緯で始めたのでしょうか?

オンラインサロン「Leo the football 学園」もスタートさせ、会員に向けたコアなイベントを開催しています。そこで部活動として、実際にサッカーをやり始めたら、チームの監督を務めることになって。僕は戦術分析が専門なので、技術的なコーチングは学園生の中にいる上手い子にお願いしています。メンバーは17歳~40歳までと幅広く、週3~4回、毎回20人以上集まって練習していますよ。

「Leo the football 学園」の部活風景
「Leo the football 学園」の部活風景(2020年10月、レオさんのツイートより

――週3~4回。これもなかなかハードですね。監督をやってみての気づきはありますか?

プロの選手は、当たり前のようにボールを止めて、当たり前のようにシュートを打っているじゃないですか。基本の技術と体力があるから戦術を考えられるわけで、僕らはまだ素材作りの段階。そのために「なぜ右から来たボールを左におかないといけないのか」「なぜ今ここで走らないと行けないのか」など、基本の技術を1つ1つ言語化していく必要があります。でもこれは、自分の新しい引き出しを増やすチャンスだとも思っています。

――YouTubeを始めて分析官、監督となったように、数年後には新しい役割、例えばサッカー選手の育成などにも繋がっていきそうですね。

そうですね、いろんな人を指導してみたい気持ちはあります。今はチームがものすごくいい雰囲気。やっぱり僕のYouTubeを見て、集まってくれた子たちなので、僕が指示することに貪欲にやってくれるんです。だから、すごくやりがいを感じますよ。

――今後の目標はありますか?

日本サッカーの哲学をアップデートすることですね。日本代表は、本当に強い強豪国になれると思っているんです。でもシンプルなぶつかりあいや、長距離を走るスピードなどが劣っていて、世界に勝てていません。これらの弱みを中和して強みで勝負できるのに、導く人がいません

あとは観客も今はまだゴールシーンしか楽しめていないと思うんです。得点シーンだけだと90分のうちに3回でもあればいいほうじゃないですか。それだけでなく、例えばパスミスにしても、なぜパスミスをしたのかを考察して解説すれば、楽しめる瞬間が増える。もっと魅力的な実況になると思うし、観客のサッカーに関する思考も変わってくると思うんです。そのためにYouTubeでは「蹴球学」という動画を作っていますし、またサッカーの教科書も作ろうとしています。

「蹴球学」シリーズ第1回目の動画。“サッカーに関わる全ての事象に対して論理的に追求・解明し、チームの勝利や個人の成長に還元するための学問”とある

――日本サッカーを本当に盛り上げるなら、ブームではなく文化にしていかないとなりませんよね。では最後に、これからYouTuberをめざす方に向け、好きを仕事にするテクニックを教えてください。

ストイックになりすぎないことですね。何をすれば自分のテンションが上がるかを考え、楽しさを持続させる工夫をするといいですよ。やっぱり義務感があると、楽しくなくなってしまうので。例えば僕だったら、得意な生配信の割合を増やしたり、実際にサッカーチームの監督をしたり。サッカーを好きでい続けるために、サッカーに対するアプローチは変えています。

(取材・執筆:名久井梨香、企画・編集:黒木貴啓/ノオト)

プロフィール

Leo the football(レオ ザ フットボール)

戦術分析官・Soccer News Youtuber

Rapper として活動する傍ら、2016年にYoutubeチャンネル「Leo the football TV」を開設。日本代表や欧州サッカーのゲーム分析を中心に動画を配信している。登録者数11万人。現在は J Sports のサッカーニュース番組「Foot!」レギュラーほか、オンラインサロン「Leo the football 学園」代表・社会人クラブ FC SVABO 監督・プロ選手の個人分析官など、活動の幅を広げている。

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