• 2020.08.14
  • インタビュー

YouTube授業「おっぱっぴー小学校」が大反響 無観客でもハイタッチ続けた小島よしお、到達した「笑いのある学習」と配信の魅力

2007年頃「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」で一世を風靡した、お笑い芸人の小島よしおさん。2020年の現在、YouTubeで「楽しく学ぶ」授業の先生として、絶大な支持を集めている。

今年は新型コロナウイルスの影響で3月から全国9割以上の学校が一斉に休校。子どもの学力低下を心配する家庭に向け、4月から「おっぱっぴー小学校」と称して「小数点」「時計のよみかた」「円周率」など算数のさまざまな授業動画を投稿した。

「線対称」を説明するため自分の顔面にペンでまっすぐ線を引いたり、「角とその大きさ」では股間に分度器を当てて足を開脚したり……。とっつきにくい算数の授業に、持ち前の底抜けに明るいユーモアを取り入れていて、大人でも楽しめる内容だ。

You Tube「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」‐“小4算数「角とその大きさ」”(画像はYouTubeより)

2011年から子ども向けライブを年間100本以上こなしていた経験から、要所要所で画面の向こうにいる子にハイタッチを求めるなど、動画には子どもの心をつかむ技術が存分に詰め込まれている。一連の動画を投稿するまでは7000人ほどだったチャンネル登録者数は、3カ月で10倍以上となる8.2万人に増えた(2020年8月13日時点で 8.62万人)

“お笑い×教育”こそが自分の方向性だったのかもしれない」と現状を見つめる小島さん。「おっぱっぴー小学校」を始めた経緯、授業動画はどのような工程で作られているのか、話をうかがった。

●休校で子どもの学力が危ない 小島よしおにしかできない授業を

――YouTube「小島よしおのおっぱっぴーチャンネル」を始めたのはいつ頃からですか。

2015年のこどもの日(5月5日)でした。2011年から子ども向けにお笑いライブをやっているのですが、その生配信だったり、ネタ動画を投稿したりしていましたね。

ごぼうのうた」とか「ピーマンのうた」とか。小野的平(おのまとぺい)っていうオノマトペを楽しく説明する動画とか。

――楽しそうですね(笑)。

でも、チャンネル登録者数は7000人くらいでした。再生回数も少なく、「ごぼうのうた」や「よしおのアルプス一万尺」といった初期に投稿していた動画は1万再生を超えていますが、小野的平なんかはもう何百くらいしかなかった(笑)。

2020年3月からは新型コロナウイルスの影響で営業もライブもできなくなったので、YouTubeで「無観客営業」と称して、ライブ配信を始めたんです。

――無観客営業……?

普段から営業でやっていたようなことを画面の向こう側の子どもたちに向けて、30分間生配信でやる感じです。カメラの前に出てきて「アスパラのうた」や「ごぼうのうた」を歌ったり、エクササイズをやったり。

最終的におなじみの「そんなの関係ねぇ!」をやって、画面の前の子たちとコール&レスポンスをやる。3月だけで14本くらいあげましたね。上裸で撮影していたので、今はほとんど非公開にしているんですけど。

――そのときからファンから反響はあったのでしょうか。

正直あんまり……。生配信の視聴者は多くて100人くらい、少ないときは一桁のときもありましたよ(笑)。

――そこから“楽しく学ぶ”授業動画の「おっぱっぴー小学校」が始まるわけですが、1本目は?

4月6日です。最初の頃、海パン一丁で撮っていた動画はYouTubeの規約に引っかかる恐れがあるので今はすべて非公開にしているんですが、算数の小数点を教える内容でした。

現在公開中の授業動画でもっとも古い「おっぱっぴー小学校」の動画「特別編 0について」”

――どんな経緯で始めたのでしょう。

お子さんがいらっしゃる、知り合いの構成作家さんからの提案でした。

新型コロナウイルスの影響で全国の小学校が休校になって、このままだと子どもの学力が失われてしまう。以前から子ども向けにイベントを多くやっているし、早稲田大学の教育学部卒という経歴もあるから、YouTubeで子ども向けに授業をやってみようよ、と声をかけてもらったんです。

休校で勉強が進んでいないというリアルな声は他にも見かけていました。YouTubeにはすでに授業動画がいっぱいありましたが、ぼくらしく、子ども向けのライブで培ってきた経験を活かせるような授業をできないかなと、とりあえず撮ってみることになって。

――どの動画も個別指導塾「桜学舎」の監修がついてますが、最初から入れようと?

はい、もともと作家さんのお友達なんですね。だから話も早くって。初めにみんなでZoomを使ったオンライン会議で、どんな授業にするか詰めていって。まずは算数の授業動画をあげていくことにしました。

●撮影、教材もすべて一人 1本に1週間かけることも

――動画は毎回、授業のわかりやすさはもちろん、つかみからオチ、時折差し込まれるギャグまで丁寧に作り込まれている印象です。1本アップするまではどんな工程ですか?

基本的に構成作家さんとディレクターさん、ぼくの3人で作っています。

作家さんに台本を作ってもらいますが、そのままやることはあまりないかな。自分からネタを差し込んでみたり、もっとこうしたほうが子どもたちに伝わると思ったら変えてみたり。LINEグループで逐一みんなに相談しながら、とりあえず一人で1本10分くらいの動画をスマホで撮っています。

動画をLINEグループにあげて、意見をもらってはまた撮り直して、というのを数回繰り返して、納得いくものができたらディレクターさんに少し編集してもらい、ようやくYouTubeに公開という流れです。

――撮影も、教材づくりも全部小島さん一人ですか?

基本的にぼく一人です。緊急事態宣言が解除されてからは、後輩2人に手伝ってもらった動画もありますが。

――それって最近じゃないですか。公開までの時間はどれくらいかかりますか?

1本につき2、3日はかかっちゃっていますね。最近はオフラインでの仕事も再開して忙しくなってきたので、1週間に1、2本というペースになっています。

――「時計のよみかた おぼえうた」なんて、針がどの数字を指したときに何分なのか、語呂合わせで覚える歌詞を自作していましたよね? かなりかかったのでは……。

あれは割とかかりました。歌詞も作ったし、子どもたちがわかりやすくイメージできるよう絵も12枚分描いたので、1週間くらいですかね。

「時計のよみかた おぼえうた」。わずか2分足らずの動画だが、子どもたちが時計のよみかたを覚えるよう歌詞と絵を一から自作した(画像はYouTubeより)

――授業に出てくる教材、すべて手作りですよね。

いやもう、自分にはそれしか作れないんで。

――人によっては編集で、もっと参考画像を合成したり、テロップを入れたりすると思うんです。

もともとは「できるだけは動画を早くあげよう」を目標に出発したので。編集を入れてしまうと時間がかかっちゃうんです。

作家さんにもディレクターさんにも無償でやってもらっていて負担をかけたくなかったので、道具も自分で作って、撮った動画にもあまり手をいれずそのまま出そう、みたいな形で続けてきました。

子どもたちからも反響はすごくあったので、結果的には良かったです。

――「日本一ベビーカーが並ぶ芸人」と謳われるほど、ライブでは親子の心をわしづかみにしています。しかし動画配信はライブほど観客の反応が見えません。画面の向こうにいる子に対して撮影するのは苦労が多いのではないでしょうか?

実はそんなことはなくて。

3月の無観客営業でも、部屋で一人カメラに向かってコール&レスポンスやハイタッチとかやっていたんです。さすがにそのときは「子どもたちは何も返してくれていないかも」と半信半疑でしたが、とにかく投げかけ続けていました。

ある日、視聴者の方が、画面のぼくに向かって子どもがハイタッチしている様子を動画でアップしてくれたんです。

――それはうれしいですね。

ちゃんとぼくの配信に応えたり喜んだりしてくれている子はいるんだなと実感を持てた。おっぱっぴー小学校でもその手応えを信じて撮リ続けていますね。

――逆に、ライブや営業の経験から生かせていることってなんでしょう。

一番は参加型にすることですね。ライブではステージに子どもたちを上げて一緒に「そんなの関係ねぇ!」をやるなど、とにかく参加できるよう意識してきました。

おっぱっぴー小学校でもただ知識を伝えるんじゃなくて、「これは何だと思う?」とか向こうが返したくなる瞬間をいくつか差し込むようにしています

――冒頭のつかみも毎回秀逸ですね。

つかみに関しては、毎回異なる始まり方になるようこだわって変えていますね。作家さんが考えたものをそのまま出すこともあれば、自分がアイデアを付け足すこともあります。

でも、冒頭に力を入れているのは営業の経験とはまた別の話で、YouTubeに詳しい人から「開始10秒、15秒でいかに続きを見たくなるかが大事」と意見をもらったからです。それまでは「気をつけ、礼、ピーヤ!」と同じことを毎回繰り返していましたね。

「円周率」回では、いきなりピザを抱えて登場し……?(画像はYouTubeより)

――10分という短さにこだわりはあるんでしょうか。

子どもの集中力が短いから、とよく言うんですけど、ぶっちゃけぼくの集中力の限界ですね(笑)。

でも、もともと長く撮った動画を編集で短くしていくことはやりたくなかったんです。作家さん、ディレクターさんに負担にかけたくなくなかったですし、ぼくとしては緊張感をもって挑めるので。ライブ感が画面の前にも伝わったほうがいいなって思います。

ただ編集という点では、ゆくゆくはテロップを増やしたい思いはありますね。

――どうしてまた?

動画についたコメントは全部見ているんですが、耳の聞こえない子も見られるようにしてほしい、というコメントがあったんです。あと、単に他の方の動画を見ていても、大事なところにテロップがあったほうがわかりやすいなと感じたので。

――子どもたちから届いた絵をプリントアウトして、小島さんのTシャツに貼って衣装にしてしまうのも最高ですよね。絵は前から届いてましたか?

全くなかったわけじゃないですけど、今のほうが圧倒的に多いですよ。事務所にお便りとして来るのは月に10通くらい、SNSなどに画像ファイルで送られてくるのは月40〜50枚に増えました。

届いたイラストをTシャツに貼り、動画での衣装として紹介している(画像はYouTubeより)

――絵をTシャツに貼るアイデアは?

YouTubeの規約上、男性でも乳首出しはNGと知り、服を着ないといけなくなってしまい(笑)。最初は自画像をTシャツに貼っていたんです。

その後、大好きだった漫画『キン肉マン』で、子どもたちが考えたキャラクターを作中に登場させていたのを思い出して。あの方式楽しかったな、子どもたちが描いた絵がよしおの服になるっていいなと、募集するようになりました。

Tシャツも100円ショップの生地が薄いやつを着ていて乳首が透けるので、それを隠す意味でも似顔絵は助かっています。

●欲しかった笑いのウケもより返ってくるように 気になる配信者は

――おっぱっぴー小学校の反響はどのあたりから大きくなったのでしょうか。

4月中頃の4本目くらいかな。一般の方が活動を紹介してくれたツイートがバズりまして、チャンネル登録者数が1万5000人~6000人くらいにまで一気に増えました。

第2波は子どもの日にフジテレビ「とくダネ!」で紹介されたときで、そこでも一気に増えました。

――これまでのライブ活動で小島さんのファンになった人だけでなく、さらに多くの親子や広い層に届いて、動画配信者として新たな評価を受けている状況だと思います。どのように感じていますか?

イベントでは会場ですぐ反応が返ってくるので、それはそれでうれしかったのですが、ぼくのSNSに感想をわざわざ届けてくれる人はそんなに多くなかったです。動画配信だと基本的にすべての感想がSNSを通して来るので、その数がすごく増えたのがうれしいですね。

ネットだけでなくリアルの場でも、普段行っている酒屋の店員さんが「おっぱっぴー小学校、見ていますよ」と声をかけてくれたり、地元の友達からも連絡があったり。

同じマンションでもエレベーターで一緒になった人が突然「数学の教師なんですけど」と声をかけてくれたことも。今までとはまた違う人たちが見てくれている実感が強いですね。ぼくのお父さんもお母さんも、今までの活動で一番ほめてくれます(笑)。

――反応が今までと異なる理由は、どのようにお考えですか?

社会貢献的な要素が大きいからだと思います(笑)。今までは自分のネタを好きな人に届ける活動でしたが、おっぱっぴー小学校は義務教育をサポートする立ち位置にいる。だから特に大人の方がほめてくださるのかなと。

――芸人として活動にかけるリソースや熱量は相対的に変わっていないと思うのですが。

皮肉なのか、おっぱっぴー小学校のほうが今までよりもおもしろいって言われることが多くなりましたよね。おもしろくしようとしているのはネタのほうなのに。授業というフィルターを通すことで、もともと欲しかったお笑いとしてのウケが大きいです。

――先日、12年ぶりにテレビ朝日「徹子の部屋」に出演し、「再ブレイク」とまで紹介されていました。この状況は予測されていましたか。

予測していませんね。やっぱり世間から反応があるのが、単純にすごくうれしい。ぼくみたいな仕事をやっている者にとって、目指しているところでもあるので。

もしかしすると、自分に合う方向性は「笑いを入れた学習」だったのかなと思い始めています。

――今後、動画配信活動に向けた思いは?

コンテンツの数はもちろん、登録者数も再生回数もどんどん増やしたいです。そうすることで、収益だけでなく、例えば課外授業ができるようになるなど、自分のやれること、可能性が広がっていくと思うんです。そこが目標ですね。

――気になっている配信者はいますか? 例えば、同じ芸能人でしたら。

やっぱり、あっちゃん(オリエンタルラジオ・中田敦彦さん)ですね。自分で動画配信活動を続けている今、そのすごさをますます実感しています。

YouTubeチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」(画像はYouTubeより)

あっちゃんは毎日動画をあげているんですよ、恐ろしいです。注いでいるエネルギーもすさまじいし、セカンドチャンネルのやりかたもおもしろい。あっちゃんが持っているオンラインサロンのメンバーをZoomでつないで、質問をもらって答えていく。

システムさえ考えてしまえば自粛期間でもすぐ実行できるし、準備もそこまでいらないので、どんどん動画を量産できると思うんです。そういう配信活動全体を見据えたアイデアもすごいですね。

――芸能人以外の方で、気になる配信者はいますか?

YouTuberの「とある男が授業をしてみた」さんです。8年前から算数・数学の授業動画を投稿している方で、すでに100万人近くの登録者がいます。

YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」(画像はYouTubeより)

ホームページにアップしたドリルや教材を視聴者にダウンロードしてもらう、動画と連動したやりかたをされていて。活動歴も長いので、小1から中3年くらいまで全ての授業を網羅していて。動画が1000本くらいあるんです(笑)。

いつも自分の授業動画を作るにあたって他のかたを参考にしますが、「とある男が授業をしてみた」さんの動画は必ず見るようにしています。ぼくにとってのYouTuberの大先輩です。

――最後に、駆け出しの配信者にむけてアドバイスをお願いします。

いやもう、アドバイスなんて本当にないです。「おっぱっぴー小学校」は作家さんのサポートがあったからこその人気で、自分だけで増やせたものでもないので。

登録者数や再生回数の確固たる増やし方なんてわからないので、むしろぜひ見つけてぼくに教えてください(笑)。

――他の配信者もみな同志という感じですね(笑)。

まさに同志というか、競争しあうよりはみんなで協力しあっていきたいです。

(企画・取材・執筆:黒木貴啓/ノオト 撮影:小野奈那子)

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